対人恐怖症についての解説です。
パワーアップして豊かな人生 > 対人恐怖症の症状と治療
対人恐怖症とは、簡単にいうと、人に会うことや社会の中に出て行くことを恐れて人を避けようとする症状のことで、あがり症ともいわれています。決して特別な症状ではなく、日本人の一割から二割ぐらいは悩まされているポピュラーな症状なのです。けれど、この症状を放っておくと社会生活に支障をきたしたり、生活していく上で必要な人間関係の構築ができなくなったりして、日常生活もままなりません。それでは、この対人恐怖症にはどのような種類があるのでしょう。まず、赤面症です。これは、他人の前に出ると異常に緊張して顔が赤くなってしまうことです。誰にだって、他人の前で顔が赤くなってしまう経験はあると思います。しかし、赤面症の場合には、顔が赤くなってしまう自分に対しての精神的な落ち込みやそのことによって他人とコミュニケーションが上手く取れなくなってしまうのが特徴です。次に、震え恐怖症。これは、他人の前に出ると緊張して声が震えたり、手足が震えたりすることです。これも赤面症と同じように、自分を精神的に追い詰めてしまうようになります。この他にも、視線恐怖症、正視恐怖症、表情恐怖症、醜形恐怖症、発汗恐怖対症、唾液恐怖症、体臭恐怖症、雑談恐怖症など、挙げればキリがないくらいの様々な種類があります。一口に「対人恐怖症」といってもこのように数多くの種類があり、また、一種類のみ発症するとは限りません。対人恐怖症は、いくつかの種類が組み合わさっている症状のケースが多いのも特徴です。
対人恐怖症で悩んでいる人には、元々から神経質な性格の人が多いようです。小さなことにこだわったり、クヨクヨと考え込んだり、落ち込んだりするような内気な性格の人がほとんどでしょう。また、小さい頃の体験や育った環境にも強い影響があるとされています。例えば、子供の頃に学校で発表する際に声が震えてしまい、そのことを友達に笑われてしまった経験などです。人見知りをしたり、人に気を遣ったりすることは普通に誰でもあることですが、対人恐怖症の人はこの心理が過度に働いてしまい、それが心の悩みとなっていることが多いでしょう。特に、10代〜20代にかけて、就職や結婚、出産などの環境が変化する期間に、対人恐怖症の症状を自覚するようです。対人恐怖症は、海外にはほとんど見られない、日本特有の文化依存症候群でもあります。個人を大切にしている外国人は、いくら人と異なった考え方や外見をしていても一向に気にしていません。ところが、日本では昔から協調性が求められ、常に場の空気を読んで社会生活を営まなければならなくなっています。子供の頃から周りに合わせて行動するように教えられてきたので、より他人の目を意識しやすいのでしょう。このような対人恐怖症の症状に共通していえることは、「他人から見て自分がどう思われているのか?」、「変に思われてしまうのではないか?」という人間関係に対しての不安が根底にあるからだといえそうですね。
対人恐怖症は、不安感や緊張、恐怖から出る症状だといわれています。緊張する場面や状況によっても異なりますが、人前に出ると顔面が紅潮する、心臓がドキドキする、汗が吹き出てくる、手が震える、頭が真っ白になるといった症状が頻繁に現れるようであれば、対人恐怖症を疑ってみましょう。また、対人恐怖症の症状が身体に出る場合もあります。めまいや吐き気、腹痛、下痢などの症状です。対人恐怖症の症状は、場合によってはパニック発作となることもあり、日々の生活に重大な影響が出ることも少なくありません。自分に自信が持てずに将来が不安になったり、相手に対しての強い不安感が原因で仕事も上手く行かなくなったりします。さらに症状が進んでくると、人と会っていなくてもその状況を想像するだけで不安で緊張してしまい、人と会うことを極端に避けるようになってしまうでしょう。こうなると、なるべく他人と関わらないで生活するようになり、引きこもりとなってしまうのです。このように、対人恐怖症は深刻化してしまうと、症状を改善するまでにかなりの時間を要するようになってしまいます。そのようなことにならないためにも、まずは対人恐怖症の前兆を知るようにし、どう対処すれば良いのかを知っておくことも大切です。誰だって人前に出ると多少は不安になったり、緊張したりしてしまうものです。ただ、その度合いが大きいか小さいかだけの違いだと割り切って考えるようにし、自分が対人恐怖症だと認識した場合でも前向きに対処するようにしてください。
対人恐怖症の治療法は、現在のところ薬物療法か心理療法が中心となります。この薬物療法とは、不安症状と深い関わりのある脳内神経伝達物質の不具合を薬により調整することです。どの薬物を用いるかは、その症状や個人の体質などとの相性の問題もありますので、一概には言えません。けれど、一般的には、うつ病の薬として開発された脳内神経伝達物質のセロトニンを調整するSSRIに緊張する場面でも不安を軽減させる作用があるため、対人恐怖症にも効果があるとされています。また、抗不安薬のクロナゼパム(製品名はランドセン、リボトリール)には、緊張や不安を和らげる作用があるため、対人恐怖症には大変有効な薬とされており、よく処方されています。さらに、高血圧や狭心症の薬として使われているβ遮断薬には、手の震えや動悸、異常な汗の量などの身体的な症状を軽減する作用があります。スピーチやプレゼンなど、何か人前で行う際にのみ使用することで、一時的に対人恐怖症の症状を抑えることができるでしょう。対人恐怖症の対処法として、安易に薬を利用することに対して少なからず抵抗を覚える人もいるかもしれません。けれど、薬の効果はその人にもよりますが、ほとんどの場合が数回以内に気持ちが落ち着いてきたり、自分に自信が持てるようになってくるようです。もちろん、効果が現れない場合にはその時に改めて別の対処法を考えればいいのです。対人恐怖症の対処に即効性を求めるならば、この薬物治療はかなり有効であるといえそうです。
認知行動療法は、うつや不安、無気力感やパニック障害といった、一般的に対人恐怖症と呼ばれている様々な症状に効果的だといわれている心理療法の一つです。この認知行動療法の利点は、短期間での症状の改善が見込める点や自分が何に対して恐怖を感じているのか深層心理を知ることができる点、相手とのコミュニケーション能力が高まる点などが挙げられます。具体的には、相手からどうして不快に思われていると感じるかといった自分自身の認知の歪みを理解し、それと同時に、緊張や不安を感じる場面を実際に何度もイメージしたり、体験したりしていきながら、対人恐怖症を克服していくのです。例えば、まず自分がどのような考え方をしているかを理解します。そして、その考え方によって自分の気分や行動がどのように影響されているのかを探る作業していきます。自分の考え方からどのような結果になるのかを十分に理解することで、しっかりとした確かな根拠をもって判断できるようにする練習を行うのです。そうすることで、どのような状況にも柔軟に対処できるようになっていくでしょう。認知療法は、決して全ての物事を楽観的に捉えることができるように練習をするものではありません。最悪の結果も想定し、その上で最も効果的だと思われるような対処ができるようになることを目的としているのです。認知療法を難しく考えている人もいるようですが、最近では入門編のような本が数多く販売されていますので、一度手に取ってみるのもいいかもしれませんね。
森田療法とは、1919年に森田正馬博士により創始され、昭和になって高良武久博士が発展させた恐怖症などに対する治療法のことです。現在では、国内だけでなく、中国を中心として世界的に活動が行われています。 森田療法の基本となる部分は、症状に囚われることなく、事実を事実として正しく認識し、全てを受け入れる「あるがまま」の状態になることです。不安や恐怖があっても、それを無理に消し去らず、あるがままの自分を受け入れる、これができた時に囚われからも解放され、生きて行く意欲が湧いてくる、というものです。森田療法は通常、入院して治療が行われることが基本となっており、次のようなスケジュールで進められます。 ・食事とトイレ以外はベッドの上で過ごす絶対安静期 ・規則正しく、外界に触れるなどを行う軽作業期 ・睡眠時間以外は、ほとんど趣味などの何らかの活動を行う重作業期 ・日常生活に戻れるように社会生活訓練を行う退院準備期 以上の過程を、通常でしたら約1ヶ月間かけて行います。けれど、このような治療法では、まとめて休日を取らなければならないというデメリットがありますよね。ですから、最近では、日記を付けることを重点においた通院による治療法が中心となりつつあるようです。どちらにしても、森田療法を行って対人恐怖症を克服するまでには個人差があり、数十日〜数年とかなりの開きがあるでしょう。また、入院費用に健康保険が効きませんので、治療を受ける際には事前に予算をきちんと立てておく必要があります。